カテゴリー別アーカイブ: 読書

ドン・ウィンズロウ「ザ・カルテル(上・下)」

81Qu37ontiLずっと前から噂はありました。あの「犬の力」の続編が出ると。それがこの「ザ・カルテル」。

前作でDEA捜査官アート・ケラーにはめられて服役していたアダン・バレーラが脱獄した。そして再びメキシコの麻薬カルテルに君臨すしようとする。しかしアダンが服役していた間に業界の勢力図は塗り替えられ、凄惨な勢力争いが巻き起こっていた。

隠遁生活を送っていたアートは、アダンによって自分の首に巨額の懸賞金がかけられていることを知る。そして今度こそアダンの息の根を止めるべく、再び銃を手にし、DEAに復帰。血みどろの麻薬戦争のただ中に飛び込んでいく・・・。

読み始めたらもう止まらない。凄過ぎる。

凄惨な描写が全編に散りばめられている中で、時たま描かれるちょっとした愛情や友情。それらが一瞬で破壊され、生まれる憎悪、復讐。そして裏切り、報復、見せしめ・・・。でもそんな中できらめく、弱い人間の強さ。心が慄える。

そして途中から気になってしょうがなかった一人の少年。麻薬戦争に巻き込まれた10代前半の少年の地獄の日々。こんなことがあっていいものか。無残過ぎる。その彼がラストで・・・。ほんのかすかな救い・・・。

またすぐにでも読み直したい一冊。

 

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C・J・ボックス「ゼロ以下の死」

51eXn9cStzL._SX353_BO1,204,203,200_このところずっと本棚の本を読み返す日々が続いておりましたが、久々に新刊本を買いました。本屋さんに並ぶのを待ちわびた一冊、ワイオミング州猟区管理官ジョー・ピケット・シリーズ最新刊です。

長女シェリダンの携帯電話に届いた悲壮なメッセージは、「凍れる森」で死んだはずのジョーの養女エイプリルからだった。
エイプリルの死に今も責任を感じていたジョーは、FBIの眼をのがれて山奥に潜伏していた元特殊部隊員で鷹匠ネイト・ロマノウスキの助けを借りて、今度こそ彼女を助けるべくシェリダンと共に追跡を開始する。するとエイプリルの移動の痕跡に重なるように発生している残忍な連続殺人事件が見えてくる。果たして彼女は一体何に巻き込まれているのか・・・。

 

散々待ったのに読むのはあっという間・・・(涙)。

シェリダンも、そしてルーシーも大きくなったなぁ。それに二人とも優しくて強くて可愛らしい。本当にピケット一家は素敵な家族だ。そして家族同然の友人ネイト。法が正しいと思えない時は簡単に破ってしまう。もっとも正しい解決法だと思ったら、ためらいもなく人を殺す。ジョーとは全く相いれない生き方なのに、お互いに強い信頼で結ばれている。読者の中にはこのネイトのファンが多いというのも頷ける。

それにしてもこのシリーズ、翻訳が出るのが遅すぎです。待つのが辛すぎる〜。

 

好村兼一「伊藤一刀斎(上・下)」

Unknownなかなか読み応えのある、面白い本でした。

ただ、ひととの出会いがあまりに偶然すぎて、リアリティがなく、思わず「そんなアホな〜」とつぶやいてしまう場面がかなりありました。物語も立ち回りもどちらかというと淡々と描かれており、血沸き肉踊るような展開はあまりありません。弥五郎(一刀斎)が剣の道を極めていく様子がじっくりと描かれています。その合間に、友や愛する女、仲間たちとの生活がほのぼのとしたタッチで描かれており、とても暖かみのある内容になっています。

そして、剣理についての師や剣豪たちとの会話は、とてもわかりやすく、なるほどと思わせられるものでした。鐘巻自斎、冨田勢源、柳生石舟斎など、剣を極めながらも人間的な弱さも見せたり、そのへんはリアルに描かれていました。

また、弟子の善鬼と神子上典膳の関係が面白い。ここは完全なフィクションだと思いますが、なぜ弟子同士が闘わなければならなかったのかの説明をつけるためなのでしょう。私はもうちょっとドロドロしたものを想像していたのですが・・・。

私は小説には少しでも冒険小説的なところがないとダメなのですが、その点では少し残念な結果に終わりましたが、でも面白かったです。

北方謙三「水滸伝1〜19」3回目の読了!

本棚読書の記事を最後にアップしたのは、昨年の11月。ということは半年も新しい本を買ってなかったってことだ。本屋さんには度々行くのだが、面白そうなのが全然無くて・・・。

で、その間うちの本棚に並んでいる本を再読しまくった。池波正太郎「剣客商売」全16巻、クレイグ・トーマスのミッチェル・ガント シリーズ3作など、ドン・ウィンズロウのニール・ケアリー シリーズ5作と「犬の力」、ロバート・ラドラムの「ホルクロフトの盟約やボーン・シリーズ3作、船戸与一の「新・雨月」等を読みまくってから、北方謙三に突入。日向景一郎シリーズ5作、「黒龍の柩」、「武王の門」などの室町ものからついに「水滸伝 全19巻」まで読み終えました。

水滸伝は読むのが3回目なんだけど、それでもやっぱり同じ所で泣くわ泣くわ。ここまできたらもう「楊令伝」まで読んじゃうしかないかと思ってたところで、本屋さんで好村兼一「伊藤一刀斎」というのを発見、買っちゃいました。

神子上典膳や善鬼がどう描かれているのか。面白いかどうか不安だけど、楽しみ。

デオン・マイヤー「デビルズ・ピーク」

Unknown先日久しぶりに本屋さんに寄っていろいろ物色していたのですが、なかなか面白そうなものがなくて困りました。でも何か一冊買って帰りたかったので、「えーいっ!」と心の中で掛け声をかけて思い切ってこいつをお持ち帰り。結果、大正解でした。

ガソリンスタンド強盗の巻き添えで幼い息子を殺され、子供を虐待する人間を殺すことに意義を見出すようになった男、牧師に罪を告白する娼婦、アルコール依存症に悩む中年の凄腕刑事。物語はこの三者の行動を行ったり来たりしながら進んでいき、やがてひとつに繋がる。

よくあるパターンなんだけど、これがよくできてる。特に娼婦が牧師に語る身の上話が秀逸。牧師との静かな会話が、これからいったいどういう方向に進んでいくのか、とにかく先が知りたくて知りたくて、一気に読んでしまいました。

アル中の刑事のキャラクターもいい。何度も禁酒を破りそうになるんだけど、やっとの思いで持ちこたえる。カウンセラーの医師の電話での気の利いたセリフがまた素晴らしい。アルコールの入ってない時の推理力と分析力には凄いものがあって、次第に真実に近づいていくのだが・・・。

アクション・シーンは少ないんだけど、凄い。リアルで、血と汗が飛び散る様が目に浮かぶ。ラスト・シーンは、迫力のアクションと、もうこれしかないって感じの納得の終わり方。 これは三部作の一作目だそうだ。次が待ち遠しい。

ロバート・ラドラム「殺戮のオデッセイ(上・中・下)」

Unknown5年ぶりくらいで読みました。原題は「ボーン・スプレマシー」

マット・デイモン主演の映画「ボーン・シリーズ3部作」は、私DVDを何度も何度も観るほど大好きなんですが、故ロバート・ラドラムの原作とはストーリーがまったく違います。でも原作の雰囲気を凄くよく出していると思います。

さて、その原作の方なんですが、30年ほど前の作品で何度も読んでいるのですが、こいつ読めば読むほど面白くなります。一作目の「ボーン・アイデンティティー」で誤解が解けて、政府の庇護のもとマリーと幸せな生活を送っていたデビッド・ウェブでしたが、誘拐されたマリーを救出するために再びジェイソン・ボーンに戻り、闘いの中に飛び込んでいくというお話。

何度読んでもこの見事なプロットに呆れ返るばかり。よくもこんなに複雑で錯綜したストーリーを考えつき、それをよくもこんなにきれいにまとめたものです。これはラドラムの作品のすべてに言えることなんですけどね。特にこの「ボーン・シリーズ」は、デビッド・ウェブという主人公がジェイソン・ボーンという暗殺者のふりをしているときに記憶喪失になるというさらにややこしい設定で、「スプレマシー」では妻を救出するために、デビッドという優しい人格では闘いを生き抜けないということで、自らボーンという血も涙もない暗殺者の人格に戻って闘う。だから主語がデビッドになったりジェイソンになったり忙しい。でもそれで今の主人公の心がどういう状況にあるかひと目で分かるわけです。ジェイソン・ボーンでいるときのデビッドのそりゃぁ凄いこと!マシーンのように正確に敵を倒していくその姿に一喜一憂、ワクワクドキドキ。

ラドラムはけっこう歳いってから作家になったんだけど、出す作品がすべてベスト・セラーになったことから、「ラドラムの奇跡」と言われたのです。でも、日本で翻訳が出た最初の頃は、あまり人気が出なかった。信じられませんよ。私夢中になって読み漁りましたけどネー。

 

C・J・ボックス「復讐のトレイル」

Unknown本屋さんに行っても面白そうな本に出会えず、しょうがないので本棚から池波正太郎の「剣客商売」を1巻から順に読んでおりましたところ、14巻まできたところで、本屋さんでこいつを見つけました。

ワイオミング州猟区管理官で、今は州知事直属の捜査官を務めるジョー・ピケット。今回の知事からの指令は、あるハンターの殺人事件の捜査。犯人はハンターが獲物を処理する方法で被害者の死体を処理していた。ジョーは、最近起きた2つの事件との類似性を見つける。果たしてこれは連続殺人なのか。

そして自己保身しか頭になく、いつもジョーを抑えこもうとする上司が、なぜ今回に限ってジョーに好きにやらせるのか。ジョーは何か違和感を感じながらも、捜査を進めていく・・・。

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待ちわびた一冊。ジョーの娘シェリダンの成長に、胸が熱くなる。そして久しぶりのネイトの登場。そしてそして、意外な犯人と犯行の動機。面白いなぁ〜。

このシリーズ、まだ翻訳されていない作品が5冊(?)ほどあるらしい。早く出してほしい!